時計業界10年目。私がロレックス デイトジャストを勧めたい三つの理由

監修:Endo Youkoh
2023/06/01

私は長年時計業界に身を置き、自分自身でも様々なロレックスを愛用してきました。
最初に所有したのはエクスプローラー 114270です。10年前はまだデイトナ以外のロレックスはよっぽどのレア個体でなければ相場が落ち着いており、114270も、中古で40万円台で購入したと記憶しています。
その次はサブマリーナー、オイスターパーペチュアル、また戻ってサブマリーナー・・・などといったように、売ったり買ったりを楽しんできました。リセールバリューが安定していて、売買しながら色々なモデルを楽しめるというのも、ロレックスの大きな魅力の一つですよね。

そんな中で、ずっと売らずに使い続けているロレックスがあります。
それは、デイトジャスト 16233です。
16233に限らず、デイトジャストはロレックスらしさが全て詰まっていると私は考えており、今後も手放す気はありませんし、次またロレックスを購入するなら別のリファレンスのデイトジャストと決めています。ちなみに、実はデイトジャストだけはずっと愛用しているという業界人は、非常に多いものです。

いったい、デイトジャストはなぜこんなに私たちを魅了するのでしょうか。

この記事ではロレックス デイトジャストの素晴らしい点を交えながら、お勧めの理由と代表的なモデルをご紹介していきます。

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ロレックス デイトジャストを勧めたい三つの理由

最初に、私がロレックス デイトジャストを勧めたい理由をお話させて頂きます。

相場が上がりきっていない

ここ数年来、ロレックスの相場は右肩上がりの上昇を続けています。
もちろんロレックスに限らず、中古市場の相場は昔に比べて上がっています。「相場」ではなく、メーカーの定価も値上がり続けていますよね。
そしてロレックスの実勢相場は、時計市場の中でも頭一つ抜きんでています。

特にロレックスの、プロフェッショナルモデル(スポーツモデル)で価格高騰が顕著です。
例えば2016年に誕生したデイトナ 116500LNは、初出時の定価1,274,400円・当時の実勢相場は200万円超でした。もともとプレミア価格であったデイトナの最新作(しかも、手巻きデイトナ時代を思わせるセラクロムベゼルを携えて)ということもあり、初値は180万円くらいになるだろうとは予測していましたが、まさか200万円を超えてくるとは、と驚いたものです。しかしながらその後の実勢相場で初値を下回ることはなく、現在では400万円台が当たり前といった様相です(白文字盤に至っては450万円前後~が当たり前)。
デイトナのみならずGMTマスターIIやサブマリーナー、そして長らく価格の優等生であったエクスプローラー等々・・・現行・生産終了モデル問わず、ほとんど全てのスポーツロレックスは定価やかつての相場を超えるプレミア化を進行させました。

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一方で、デイトジャストやチェリーニなどといったクラシック系のモデルは、まだ相場を上げ切っていません。
前述の通り、中古市場全体で相場が上がっているので、確かにこれらクラシックモデルも昔よりかは高値です。とは言え、年式やモデルにもよりますが、その上昇率は緩やか。現行モデルは定価超えが多くなってきましたが、生産終了モデルなら50万円台~80万円台で購入できる個体も少なくありません。
「100万円出さなくてはロレックスは買えなくなった」と言われている時代において、かなりお得感が強いですよね。

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だからと言ってデイトジャストは「再販価値がない」「売却時に買い叩かれる」などといったことはありません(ロレックスの売買実績に長けた、信頼できる買取店であれば、ですが)。
実はデイトジャストは、ロレックスで最も売れているモデル。特に定番どころは在庫があるほど売上に直結しやすいため、時計専門店はデイトジャストの在庫を絶対に切らしたくありません。また、後述しますが、多くのバリエーションがあるため、それらを豊富に揃えたいと考えています。
そのためデイトジャストはスポーツロレックスのように「購入時の金額を大きく超える買取査定金額が出た」といったことは稀ですが、一方で安定して高値であるため、売りやすく買いやすい高級腕時計と言えるでしょう。

バリエーションが豊富

デイトジャストのもう一つの魅力は、バリエーションが本当に多いこと!ロレックス随一の、豊かな種類が用意されています。
現行だけでもベゼルやブレスレット、素材に文字盤カラー、デザインが多彩ですが、デイトジャストは1945年から製造されてきている超ロングセラー。そのため生産終了モデルも入れると、その組み合わせは果てしないです。
この長い歴史の中で、時代のニーズやトレンドを取り入れたデザインが採用されているところも、楽しいバリエーションに繋がっていますよね。

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見た目だけではなく、ケースサイズも豊富なのが嬉しいところ。
スポーツラインだと一つのコレクションでワンサイズ展開が多いのですが、デイトジャストは現行メンズでデイトジャスト41の41mm、デイトジャスト36の36mm。そしてレディデイトジャストとして31mmおよび28mmと、多彩にラインナップされているのです。ちなみに昔はレディースに26mmサイズがありました。
ご自身の好みや体格で選んだり、パートナーとペアウォッチあるいはシェアウォッチとして楽しんだりできるのは、デイトジャストならではと言えるでしょう。

加えて私自身の考えですが、「人と被るのは嫌だけど、有名な時計を着けたい」と結構思ってしまいます。そんなニーズをお持ちの方であれば、バリエーション自体が多彩なデイトジャストはうってつけです。

ロレックスらしさが詰まっている

前述の通り、デイトジャストは1945年に発表されました。間もなく80年という歴史には驚かされますよね。

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このデイトジャストが何かというと、ロレックスの三大発明の中の一つの機構です。
ロレックスは1926年に防水性を持った「オイスターケース」、1931年に世界初の全方向回転式ローターを備えた、高効率な自動巻き機構「パーペチュアル」で特許を取得していました。
さらに1945年、ロレックスは「デイトジャスト」の機構のローンチで以て「ロレックス三大発明」を完成させます(全ての機構がロレックスの「発明」であるかどうかは議論になるでしょうが、いずれも非常に画期的であり、後の腕時計史を大いに進化させたことは間違いありません)。

このデイトジャストは「0時を境目に、デイトがカシャっと瞬時に切り替わる」という機構なのですが、さらにデイト窓を3時位置に設置したことがミソです。と言うのも、当時のデイトはポインターデイトが主流。ジャケットの袖口を少しズラすだけでデイトを確認できるこのレイアウトは、その後時計業界のスタンダードとなったのはご存知の通りです。ロレックスは長らく実用時計の王者であり続けてきましたが、こういったエポックメイキングな側面も、他の追随を許さない所以なのだろうと思います。

さらにデイトジャストは先行して開発していた「オイスターケース」「パーペチュアル」をも備えており、まさにロレックスのアイコンを詰め込んだ一大シリーズ!ロレックス業界人としては一度使っておきたいモデルなのです(もちろん一度と言わず、何度でも)。

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さらに特徴的な切り込みの入ったフルーテッドベゼルやジュビリーブレスレット等、「これぞロレックス」といったデザインコードが随所に溢れているのもデイトジャストの魅力です。

腕元で最もロレックスを感じられる一本とも言えるのではないでしょうか。

これは欲しい!人気のロレックス デイトジャスト5選

私がデイトジャストをお勧めする理由をお話したところで、人気モデルを厳選してご紹介したいと思います。

なお、デイトジャストは直観やルックスの好みで選ぶのが一番だと思いますが、大まかな種類を知っておくとネット販売等で実物を見ずに買う時に役立つと思います。

まずサイズは、前項でもご紹介した通りメンズとして41mmまたは36mm、レディースとして31mm、28mm、生産終了した26mmがラインナップされてきました(ちなみにかつて、オイスターパーペチュアル デイトというラインがあり、デイトジャストとほぼ変わらない見た目・機能でありながら34mmサイズが楽しめました)。

さらにベゼルにはフルーテッドベゼル、スムースベゼル、その他貴石がセッティングされていたり手彫りだったりするタイプが存在します。
ブレスレットは一部の生産終了モデルを除き、基本的に5連のジュビリーブレスレットかスポーツモデルにも用いられる3連のオイスターブレスレットが採用されています。
その他インデックスやカラーに違いがありますが、大まかに「サイズ」「ベゼル」「ブレスレット」でなんとなく分類して頂ければと思います。

ちなみにデイトジャストは、型番である程度の種類がわかります。
例えば現行モデル126333。
最初の1263⇒モデルの種類、5桁目の3⇒ベゼルの種類(3はフルーテッドベゼル、0だとスムースベゼルです)、6桁目の3⇒素材の種類(3はイエローゴールド等、他のコレクションでも共通して末尾の数字は素材を示します)を表しています。

※相場感を掲載しておりますが、中古モデルは状態や年式によって値付けが異なります。参考程度にお読み下さい。

デイトジャスト 16233、16233G等

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スペック

素材:スティール×イエローゴールド

ケースサイズ:直径36㎜

文字盤色:ホワイト、ブルー、ブラック他

駆動方式:自動巻き

ムーブメント:Cal.3135

実勢相場:80万円前後~90万円台

まずご紹介するのは、1988年頃~2004年まで製造されていたRef.16233です!
デイトジャストも他のロレックスのコレクション同様、時代じだいでアップデートを果たしており、いくつかの世代に分かれるのですが、こちらは第五世代に当たります。
ちなみに私が所有し続けているデイトジャストでもあります。

約20年に渡って製造されたということもあり、流通量がとても豊富。
さらにこの世代からデイトジャストにバリエーションが格段に増え、コレクションとして面白味がいっそう増しました。

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ムーブメントにCal.3135を搭載していることも、Ref.16233を強くお勧めする理由です。
Cal.31系は1980年代後半から現在に至るまで、ロレックスの高精度と耐久性、そして信頼性を担保してきた名機中の名機です。2015年以降、順次新世代のCal.32系に載せ替えられていきましたが、長らくロレックスの実用性を下支えしてきたのがCal.31系と言えるでしょう。

前述の通りブラックにホワイト、ブルーなどと種類が本当に多彩なのも、Ref.16233の大きな魅力。
なお、インデックスにダイヤモンドをセッティングしたモデルはリファレンスが16233G、ホワイトシェル文字盤を採用したモデルはRef.16233NRなどと表記されます。
モデルや年式にもよりますが、概ね80万円台~90万円台で出回ります。

扱いやすく、相場もまだ落ち着いているので、初めての高級腕時計としてもお勧めです。
ただしこの年代は、ジュビリーブレスレットがヨレていたり、ベゼルの小傷が目立つ個体も販売されています。もちろん美品であるほど高値となりますが、予算と折り合いをつけて、お気に入りの一本を見つけてみて下さいね!

デイトジャスト 1601

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スペック

素材:ステンレススティール×イエローゴールド

ケースサイズ:直径36㎜

文字盤色:ブルー、グレー、シャンパン他

駆動方式:自動巻き

ムーブメント:Cal.1575(またはCal.1565)

実勢相場:60万円前後~70万円前後

次にご紹介するのは、1960年頃~1980年頃まで製造されていた、デイトジャスト第三世代のRef.1601です!
第二世代までデイトジャストは金無垢またはコンビのみがラインナップされていましたが、第三世代よりステンレススティール製モデルが登場。それが、こちらのRef.1601です。

デイトジャストらしいフルーテッドベゼルやジュビリーブレスを備えつつも、ベーシックなステンレススティールとなることで落ち着いた印象が強まりますね。

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搭載するムーブメントはCal.1575(1965年頃まではCal.1565)。
前項でCal.31系についてべた褒めしましたが、基本的にロレックスはどの年代でも実用性を訴求してきたブランドです。このCal.157系もしかり(ちなみにCal.1565はCal.1575より振動数が低いですが、これまた信頼性において高い評価を得ています)。堅牢性やメンテナンス性に優れており、またロレックスの多くのモデルに搭載されたことから、メーカーのみならず民間修理会社で修理やメンテナンスしやすいのも嬉しいですね。

前項でご紹介した第五世代ほどではありませんが、文字盤のカラーバリエーションも豊富です。きちんとメンテナンスされた個体であっても50万円台~が相場感なのも、買うべき理由の一つではないでしょうか。

デイトジャスト 116200

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スペック

素材:ステンレススティール

ケースサイズ:直径36㎜

文字盤色:ブラック、ホワイト、ブルー他

駆動方式:自動巻き

ムーブメント:Cal.3135

実勢相場:80万円台~110万円前後

同じくステンレススティール製のデイトジャストですが、さらにスムースベゼルでスポーティーな印象をまとっているのがRef.116200です。ちなみにデイトジャスト第六世代にあたり、ムーブメントはCal.3135です。

ブレスレットはジュビリーとオイスターがラインナップされていましたが、いずれにせよとてもシンプルでベーシックですよね。
一方でデイトジャストらしい厚すぎないケースやホワイトゴールド製の上品な針・インデックスはエレガントで、やはりスポーツロレックスとは違った魅力を湛えます。

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スポーティーと言うこともあり、一時価格が上昇傾向となったこともありましたが、現在では80万円台~110万円台に落ち着いています。
生産終了から年式を経すぎていないこともあり、状態の良い個体が多く出回っているのも特筆すべき点です。

デイトジャスト ターノグラフ 116264

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スペック

素材:ステンレススティール×ホワイトゴールド

ケースサイズ:直径36㎜

文字盤色:ブラック、ホワイト、ブルー

駆動方式:自動巻き

ムーブメント:Cal.3135

実勢相場:100万円前後~120万円前後

2004年に登場するも、10年も経たずに生産終了した「ターノグラフ」をご存知でしょうか。
デイトジャストの派生モデルですが、時間計測ができる回転ベゼルを搭載し、かつレーシーな印象の強いレッドが差し色に使われた珍しいシリーズです。
短命とは言え決して人気がないわけではなく、むしろ製造本数の少なさも相まって、年々相場を上げていることは特筆すべき点です。

ではターノグラフは、いったいどのようなデイトジャストなのでしょうか。
「2004年登場」と前述しましたが、ロレックス史にターノグラフの名前が出てきたのは1953年とかなり早い段階です。もっとも初代ターノグラフはデイトジャストというよりも、スポーツロレックスの原型となったと言われるような、スポーティーな外観をしていました(ちなみに初代ターノグラフが回転ベゼルを搭載していたことから、プレサブマリーナーと呼ばれることも)。

さらに1956年、「サンダーバード」と呼ばれるモデルが登場します。
これはアメリカ空軍のアクロバットチーム「サンダーバーズ」隊長のドン・フェリス大佐の引退を記念して特注された一本から範を取ったと言われるデイトジャストで、エンジンターンドベゼルを搭載したデイトジャストとして人気を博しました。このサンダーバードと入れ替わりで―リファレンスからも後継機として―誕生したのが、ターノグラフというわけです。

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「TURN-O-GRAPH」 と文字盤に記されているように、ゼロへ戻る回転ベゼルが名前の由来になっているのでしょう。
デイトジャスト特有のフルーテッドベゼルにプリントされたスケールも、どこか独特ですね。
なお、バリエーションはオイスターブレスレットまたはジュビリーブレスレットの二種が基本となり、文字盤はブラック・ホワイト・ブルーが展開されてきました。

相場が年々上がっているとは言え、まだ100万円前後~で購入できるのは嬉しいところ。
ただしブルー文字盤の相場高騰は著しいため、注意が必要です(そもそも希少ということもありますが)。ちなみにサンダーバードの方は製造年が長いこともあり、中古市場によく出回っています。

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状態の良い個体が70万円台~90万円台で見つかると思いますので、ご予算を抑えて「人と違ったデイトジャスト」をご検討の方にはお勧めです!

デイトジャスト 126234

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スペック

素材:ステンレススティール×ホワイトゴールド

ケースサイズ:直径36㎜

文字盤色:ブルー、シルバー、スレート他

駆動方式:自動巻き

ムーブメント:Cal.3235

実勢相場:130万円台~

次にご紹介するのは、現行デイトジャストです!
外装はステンレススティールを基本に、ホワイトゴールド製ベゼルを搭載させてシンプルでベーシックな仕上がりとなったRef.126234。
文字盤バリエーションの豊富さは現行ロレックス随一で、ブルーやシルバー、ブラックはもちろん、オーベルジーヌ(パープル)やピンク、あるいは「パームモチーフ」や「フルーテッドモチーフ」等、高度な技術力に裏打ちされた美しくもユニークな文字盤がラインナップされております。

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搭載するムーブメントはロレックスが「最新世代」と自負するCal.3235です。人気モデルの最初のRef.16233の項でもお話しましたね。
ロレックスは2015年以降、これまでロレックスの基幹技術を担ってきたCal.31系から、Cal.32系へとアップデートし、順次既存コレクションへの載せ替えを行ってきました。
Cal.31系も素晴らしいムーブメントであることは変わりありません。しかしながらCal.32系は高効率なクロナジーエスケープメント(脱進機のこと)・耐磁性能に優れたブルーパラクロムヒゲゼンマイ・高性能な耐震装置パラフレックス・ショック・アブソーバーを標準装備としたことが大きな進化となります。
これによっていっそう安定した高精度や堅牢性を維持するとともに、約70時間のパワーリザーブを獲得しました(従来は約48時間)。

現行品ということもあり、相場感は高めです。
しかしながら高いだけの理由がある、至極のコレクションに仕上がっています。

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なお、イエローゴールドやエバーローズゴールド等のロレゾール(コンビ)もお勧めです。

まとめ

時計業界10年目となる私が、ロレックス デイトジャストをお勧めさせて頂きました。
デイトジャストの魅力は色々ありますが、やはりロレックスらしさを感じられるところだと思います。 
価格も安定傾向ですので、ロレックスファンの皆様、次の一本にデイトジャストはいかがでしょうか?