プロが選ぶ高級クォーツ時計とは?その魅力と選ぶポイントを徹底解説

監修:Onoda Koichi
2023/10/13

 

ステータスがある大人が選ぶ腕時計は、高級機械式時計に限ると思っていませんか。
実は上質な高級クォーツ時計にも、目の肥えた大人を魅了する名機がたくさん存在します。
特に美しく優れた高級クォーツ時計は、プロが自信をもっておすすめするクオリティを誇ります。
今回は、プロが選ぶ「時計好きな方にこそおすすめしたい高級クォーツ時計」の魅力と、選び方、注目の名機についてご紹介します。

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あえて選びたい「高級クォーツ」

高級時計といえば、機械式時計を連想される方が多いかと思います。
「クロノメーター」や「ジュネーブ・シール」よりも厳しい、ブランド独自の機械式時計検査基準をクリアしたタイムピースを揃えたメゾンもあります。
また、ぜんまい動力を最大限まで活かすパーツ開発、超複雑機構をいくつも封じ込める卓越した職人の技は、世界中の時計ファンを魅了し続けています。

しかし、そんな風潮のなかでもあえて選びたい「高級クォーツ時計」には、機械式時計にない魅力があります。
そこで、高級クォーツ時計をプロがおすすめする理由について解説しましょう。

機械式を凌駕する精度

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出典:https://www.grand-seiko.com

高級クォーツ時計最大の魅力は精度の高さです。
機械式時計には精度を保証する「クロノメーター規格」がありますが、その基準は日差-4秒~+6秒の範囲となりますが、機械式としては十分高精度です。
しかし、クォーツ時計は次元が違います。
基本は月差、モデルによってはなんと年差で表せるほど超高精度なモデルまで存在します。

クォーツ時計は、その名のとおりクォーツ(水晶)が部品として使用されています。クォーツには圧力をかけると振動する性質があり、時計に使用されるクォーツは水晶振動子と呼ばれます。
水晶振動子は、電圧をかけると1秒間に32,768回正確に振動するよう調整された特殊な人口クォーツで作られます。32,768回は2の15乗で、半導体を手がける電子工学の世界では2進法上非常に便利な数字です。

クォーツ時計の誕生と日本の技術

クォーツ時計の故郷は、日本です。
1964年の東京オリンピックで、セイコーの卓上時計がスピード競技などの計測に使用され、精度の高さが話題となりました。
1969年にセイコーがローンチしたクォーツ アストロンは、世界初のクォーツ腕時計です。
クォーツ アストロンの精度は日差±0.2秒、月差±5秒とされ、すでにクロノメーターをはるかに凌駕する精度を実現していました。
クォーツ時計の誕生の背景にあったものは、高度経済成長期の日本で日進月歩だった電子工学における半導体技術の発達と、水晶振動子の開発です。

非常に正確なクォーツ時計は様々な分野で活躍し、実用性の高い時計として瞬く間に世界の時計業界を席巻しました。

 

優れたコストパフォーマンス

クォーツ時計には様々なメリットがありますが、コストパフォーマンスが高いこともそのひとつです。機械式のムーブメントは平均しても100個以上のパーツが使用されていますが、クォーツ式は50~80個程度と機械式ほど複雑ではありません。また、機械式ムーブメントの部品数は搭載した複雑機構によって青天井。

パテックフィリップのキャリバー 300 GS AL 36-750 QIS FUS IRMは、ムーブメントの部品数だけで1,366個もあります。
少なめの部品とシンプルな構造を持つクォーツ時計は、工場生産に向いており大量生産・安価での供給が可能です。ディスカウントショップで手に入る安価なスポーツウォッチでさえ、ソーラー電池やタフなボディを持ち、長く使える優れものです。
クォーツ時計は、安くて正確無比、コストパフォーマンスに優れた腕時計なのです。

抜群の使い勝手

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出典:https://www.facebook.com/CASIOGSHOCKJapan/

クォーツ時計と機械式時計の違いのひとつが、動力です。
機械式時計は巻き上げたゼンマイがほどける力で動きます。一方、クォーツ時計は電池で動いています。
機械式時計は手動なら手でリューズを巻く必要があり、自動でも身につけていなければ動かなくなってしまいます。
クォーツ時計は特殊な長寿命電池が動力で、電池がなくなる直前まで正確に動きます。

また、近年はソーラー機能を搭載し、定期的な電池交換を必要としないモデルも少なくありません。電池がなくなっても時計店に持ち込めば簡単に交換してもらえます。
さらに機械式時計は非常に精緻な機械で、衝撃に弱い精密機器です。クォーツ時計は比較的丈夫で、なかにはカシオのG-SHOCKシリーズのように大変頑丈かつ衝撃にも耐える製品もあります。

そこまで頑丈ではなくても、日常で気軽に身につけられる程度の丈夫さがあり、機械式時計好きでも仕事中はサブのクォーツ時計、という方は少なくありません。クォーツ腕時計の中でも、高級クォーツ時計はカジュアルウォッチと一線を画すクオリティの高さが特徴です。
クォーツ時計は一般に月差±10秒~20秒という高い精度、優れたコストパフォーマンス、抜群の使い勝手の良さなど、魅力が多い腕時計なのです。
それでは、腕時計のプロとしておすすめしたい人気の高級クォーツ時計をご紹介しましょう。

 

定番高級クォーツ時計「グランドセイコー」

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出典:https://www.grand-seiko.com

まずは、グランドセイコー(GS)の高級クォーツ時計からご紹介します。
グランドセイコーはセイコーから1960年に誕生した、高級コレクションです。グランドセイコー誕生当時、セイコーはスイスを中心としたハイブランドに負けない、世界に通用する「高級腕時計」の開発に取り組んでいました。

そして誕生したグランドセイコーは、長らくセイコーの高級コレクションとして愛されてきました。
2017年にはセイコーから独立、グランドセイコーは新たなる高級腕時計ブランドとして独自の高みを目指しています。

 

グランドセイコー スポーツコレクション SBGX343

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出典:https://store.grand-seiko.com

グランドセイコーでおすすめしたいモデルは、スポーツコレクションSBGX343です。グランドセイコーでは、最高峰のムーブメントに「9」という数字が入ります。
最高峰のクォーツ式ムーブメントには、「9F」というナンバーが与えられています。

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出典:https://www.grand-seiko.com

9Fクォーツムーブメント

9Fクォーツムーブメントは、クォーツ式腕時計の生みの親であるセイコーが、すべての技術力を注いで開発しました。
以下に、9Fムーブメントの特徴を挙げます。

・年差±10以内という超高精度機構
・瞬時に切り替わる瞬間日送りカレンダー
・太く重い針を回すための動力
・秒針が目盛りを正しく示す指示精度
・保油性を高める高気密構造

SBGX343は最高峰ムーブメントのひとつ、「キャリバー9F61」を搭載した、スポーツウォッチスタイルのタイムピースです。
太く重い針は、グランドセイコーを代表する名機のひとつ、44GSで確立した「セイコースタイル」に欠かせないポイントのひとつです。セイコースタイルは3つのデザイン文法と、それを支える9つのデザイン要素で構成されており、グランドセイコーの目指す「美しさ」の指標です。

徹底した研磨による鏡面や鋭角から生まれる光と陰影のせめぎあいが、セイコースタイルから生まれる「日本の美」、グランドセイコーの気高さを生み出しています。
SBGX343もセイコースタイルの美を忠実に具現化、輝く太い針と2色に光る蓄光のカッティングインデックス、ヘアライン仕上げと鏡面仕上げが見事に調和したケースが特徴です。

セイコースタイルでは美しく研磨された太い針を使用します。機械式時計はトルクが大きく、重い針を回すパワーが出しやすいのですが、クォーツ式腕時計はあまり大きな動力を生み出せません。
クォーツムーブメントでグランドセイコーの太い針を回すトルクを生み出すために、ツインパルス制御モーターが開発・搭載されました。
また、ほぼずれることがないクォーツムーブメントにさらなる完璧さを期すべく、緩急スイッチも搭載しています。そして、スーパーシールドキャビン構造で、ローター部の潤滑油が切れたり、微細なチリやホコリがムーブメントの精度を落としたりする劣化を長く防止します。
さらに、40,000A/mの高い耐磁性能を誇り、電子機器に囲まれて働く方にも安心して使えるタフさを備えます。
ねじロック式りゅうずを採用したことで、気密性、防水性も向上しています。

 

定番高級クォーツ時計「ザ・シチズン」

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出典:https://citizen.jp

セイコーと双璧をなす日本の時計ブランド、シチズンでも、高級クォーツ時計シリーズを展開しています。
シチズンの高級クォーツ時計シリーズは、「ザ・シチズン」。
「ザシチ」と呼ぶ熱狂的ファンも多い、人気の高級クォーツ時計です。腕時計のプロとして特におすすめしたい、ザ・シチズンのAQ6100-56Lをご紹介します。

 

ザ・シチズン AQ6100-56L

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出典:https://citizen.jp

シチズンでおすすめの高級クォーツ時計は、ザ・シチズンのAQ6100-56Lです。ザ・シチズンは、1995年に産声をあげたシチズンのフラッグシップシリーズであり、高級腕時計シリーズでもあります。
コンセプトは、【使う方の人生に永く寄り添う腕時計であるために、「精度」「品質」「デザイン」「ホスピタリティ」に挑み続ける】です。

ザ・シチズンのシンボルマークは、翼を広げた気高い鷲。
鷲は1km先の獲物も見通す眼を持ち、人間のパートナーとして長い歴史を歩んできた鳥です。鷲の眼のように「未来」を見据える眼をもち、人々の歩みに寄り添う製品開発につとめるという意味を込めて、イーグルマークがデザインされました。

ザ・シチズンでは機械式時計とクォーツ時計双方を展開していますが、クォーツ時計で注目すべきは驚異的な精度の高さでしょう。なんと、「年差±1秒」を実現したのです。
シチズンでは、この高い精度を「限りなく純度の高い1秒」と呼んでいます。純度の高い1秒を刻むために、一般的なクォーツ時計に使用されている音叉型水晶振動子よりも高い精度を出せる「ATカット型水晶振動子」を採用しています。

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出典:https://citizen.jp

 

エコ・ドライブ

シチズンでは、ATカット型水晶振動子以外にも、エコ・ドライブによって1秒の純度を極めています。
エコ・ドライブは太陽光はもちろん、室内の光などわずかな光でも電気に変えて動力にする技術です。
定期的な電池交換が必要なく、屋内でも充分動き続けます。
優れた水晶振動子と、シチズンが開発し世界的にも名高い光発電「エコ・ドライブ」と組み合わせ、部品の1つに至るまで精度の向上のために創意工夫を加えています。
シチズンの技術の結晶として誕生した「結晶」が、ザ・シチズンのクォーツ時計です。

 

ザ・シチズンのAQ6100-56Lは、年差±1秒の精度を誇るエコ・ドライブ搭載モデルです。
また、パーフェックスと呼ばれる技術をムーブメントに搭載しており、磁気・衝撃に強くずれにくいタフさを備えました。

パーフェックスとは「JIS1種耐磁機能(直流磁界4800A/m)」「衝撃検知機能」「針自動補正機能」の3種を組み合わせた技術です。さらに、ケースにはデュラテクトαというシチズン独自の硬化加工を施し、ザラツ研磨で磨きあげたステンレスが傷つかない工夫がされています。

文字盤はラピスラズリのようなブルーに微細なガラス粉を散りばめ、まるで峻岳の頭上に広がる深い夜空と一面の銀河のよう。息をのむほどの美しさと、研ぎ澄まされた正確さ、ビジネスシーンで気兼ねなく使えるタフさを備えたタイムピースです。
参考定価は770,000円(税込)です。

 

定番高級クォーツ時計「クレドール」

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出典:https://www.wako.co.jp

クレドールもまた、セイコーから生まれたブランドのひとつです。
セイコーは1974年に貴金属素材の腕時計である「セイコー特選腕時計」をブランド化。クレドールが誕生し、2019年に独立させました。

クレドールとはフランス語で「黄金の頂き(CRÊTE D'OR)」という意味の言葉です。その名の示す通り、貴金属をはじめ厳選された素材、ムーブメントを使用し、デザインやジェムセッティングにも繊細なこだわりを欠かしません。

クレドールは山の頂にも王冠にも見えるシンボルマーク「クレスト」を使用し、七宝や琺瑯、象嵌、ミニアチュールなど工芸技術を惜しみなく注いだ、芸術作品のようなデザインをいくつも生み出してきました。
また、初のクォーツ式高級ドレスウォッチをリリースしたブランドでもあります。
クレドールのおすすめモデル、GCAR965について解説します。

クレドール GCAR965

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出典:https://www.credor.com

クレドール GCAR965は、ミルクのように優しいカラーのダイヤルと、1cmを切る薄型ケース、上質なブラッククロコダイルストラップを備えたドレスウォッチです。
クレドールには金やプラチナなどのマテリアルを使用したもの、ジェムセッティングがアクセサリーのように輝くデザインもありますが、正統派ドレスウォッチもメインのひとつ。

流行のスポーツウォッチでは一段上のスーツスタイルに合わない、という方におすすめです。
特にGCAR965は陶器のようなつやめきのダイヤルに、クレストマーク、ローマンインデックス、バーインデックスを絶妙なバランスで置いた品の良いデザインです。
また丁寧な研磨を施された薄型ケースはスーツの袖口にすっと収まり、ホワイトタイ・ブラックタイにも合わせられる格式の高さを誇ります。

広々と余裕を持たせたダイヤルや細身に仕上げたラグが軽やかさをもたらし、上質さとスマートさをあわせ持つところも特徴のひとつです。
しかも、格調高いフォルムでありながら、クォーツ式のため薄くて軽やか、面倒がない点が、多忙な毎日を過ごす方に嬉しいポイントではないでしょうか。
ドレスコードのある場に出向く機会が多い紳士に、ぜひ1本持っていて欲しい逸品です。
参考価格は363,000円(税込)です。

 

定番高級クォーツ時計 「カルティエ」

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出典:https://www.cartier.jp/

カルティエは宝飾ブランドとして誕生し、古くから世界中の王侯貴族御用達のメゾンとして華々しく社交界を彩りました。
「王の宝石商、宝石商の王」という称号は、まさにカルティエに相応しいものです。

そんなカルティエは、かなり早い時期から腕時計制作をスタートさせています。
カルティエの人気モデルのひとつ、サントスはなんと世界初の本格的腕時計としてデザインされた、とされています。

カルティエでは宝飾品の片手間で腕時計を扱うのではなく、完全に主力商品のひとつとして力を注ぎ、デザイン・ムーブメント・ジェムセッティングなどに工夫を凝らしてきました。
ジュエラーであり、ウォッチブランドでもあるカルティエには、世界のセレブリティたちを魅了してきた美しいタイムピースが揃っています。
そんなカルティエの腕時計のなかから、高級クォーツ時計のひとつサントスデュモンW2SA0011をご紹介します

 

サントスデュモン W2SA0011

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出典:https://www.cartier.jp

サントスは、その名前の由来となったサントス・デュモンが社交界でカルティエの三代目と出会ったことで生まれた、とされる腕時計です。
サントス・デュモンはブラジル人飛行家・発明家で、社交界の人気者であり、当時のファッションリーダーでもあったユニークな人物です。
「飛行機の操縦桿を握りながら懐中時計を見ることは難しい」という彼の言葉から、カルティエが1904年にデザインしたサントスは、世界初の本格的メンズウォッチとされます。

パイロットウォッチとしてデザインされたサントスは、視認性の高いシンプルで実用的なデザインと、ベゼルを留めるビスが特徴です。
アールヌーボー華やかな時代に、流行を先取りするようなアールデコ調のシンプルモダンな腕時計を、ファッションリーダーのためにデザインしたカルティエのセンスには脱帽です。

サントスは100年以上の歴史を経てもなお、誕生当時のデザインに現代的解釈を加えつつ今に引き継がれています。サントスデュモン W2SA0011はスクエアのダイヤルを持ち、18金ピンクゴールドのベゼルとステンレススティールケースのコンビネーションが際立つフォルムです。

サテンブラッシュ仕上げにサンレイ加工を施したシルバーダイヤルは、光の加減でシャンパンゴールドにも見える輝きを放ち、ブラックアリゲーターストラップが全体を引き締めています。
カルティエの腕時計はインデックスにロゴが入っているものが多いのですが、サントスデュモンW2SA0011はローマンインデックスのうち、7時のV部分に細く入れられています。
カルティエらしい、エスプリの利いたアクセントですね。
裏ブタには当時サントス・デュモンの手書きサイン「S=D」が刻印されています。

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出典:https://www.cartier.jp

リューズにはパール文様を施し、ブルースピネルカボションがセッティングされています。
また、針は高級ウォッチの定番、伝統のブルースティール針です。
さらに、カルティエ独自の電池を採用することで通常の約二倍、5年という長寿命モデルを確立することができ、お手入れも一層楽になりました。
カルティエの伝統を受け継ぎながら、クォーツムーブメントの薄さと軽さ、使い勝手の良さをあわせ持つおすすめのタイムピースです。
参考定価は、880,000円(税込)です。

 

時計好きにこそ選んで欲しいプロが認める高級クォーツ時計

プロの目から見ても絶賛の品質を有する、高級クォーツ時計の名機をご紹介してきました。
普段、様々な機械式時計を愛で、目の肥えた時計好きの方にこそ選んで欲しい逸品ぞろいです。

「時計は機械式!複雑なムーブメントにこそ宇宙に通じる美学がある」という方、良くわかります。しかし、誕生から半世紀以上の時を経て、各社の高級クォーツ時計は機械式時計とは一線を画す魅力で、時計好きの方の心と好奇心をくすぐるはず。いえ、時計好きだからこそ、はまってしまうツボがきっとあるはずです。
ぜひ一度、魅惑の高級クォーツ時計の世界に足を踏み入れてみませんか。