世界5大時計に数えられる雲上ブランド「ブレゲ」。
トゥールビヨン、ミニッツリピーター、パーペチュアルカレンダー。これら時計の複雑機構を一人で作り出した天才時計技師である“アブラアン・ルイ・ブレゲ”が興した歴史あるブランドです。
今回はそんなブレゲのなかでも特に人気が高い「マリーン」の特徴や魅力についてご紹介していきます。
ブレゲとは
出典:https://www.breguet.com/
ブレゲは1775年創業の一流メゾン。
スイス生まれの時計師アブラアン・ルイ・ブレゲが、フランスのパリで工房を構えたことが起源となります。
アブラアン・ルイ・ブレゲは多くの複雑機構を作り出し、「時計の歴史を200年早めた」と称される天才時計師として知られています。
現在は時計界の三大コングロマリットのひとつ、スウォッチグループ傘下のブランドとなっています。
世界5大時計である
世界5大時計とは、世界的に評価の高い時計ブランドです。
その名を連ねるのは“パテック・フィリップ”、“ヴァシュロン・コンスタンタン”
“オーデマ・ピゲ”、“A.ランゲ・アンド・ゾーネ”、そして“ブレゲ”です。
これらのブランドに共通しているのが「世界最高峰の技術を有している」「王侯貴族や富裕層向けに1点ものを作ってきた歴史がある」「創業から長い歴史がある」「時計業界の発展と保護に貢献している」という点です。
ブレゲには長い歴史があり、創立者であるアブラアン・ルイ・ブレゲは世界の時計史に数々の功績を残してきました。
多くの技術を生み出している
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アブラアン・ルイ・ブレゲは生前、時計作りに関するさまざまな技術革新をもたらし、後世からも高い評価を受けています。
「トゥールビヨン、ミニッツリピーター、パーペチュアルカレンダー、パラシュート、ブレゲひげゼンマイ」これらの複雑機構を作り出しました。また針の先に穴の開いた円形パーツが特徴的な「ブレゲ針」を考案しており、月を連想させるデザインはブレゲ時計の多くに採用されています。この時代の針は短く、太く、装飾が施されているものが主流でしたが、この針をどうすれば合理化できるかと考えて作られたといいます。1783年頃にブルースティール製の極めて斬新な針も生み出しました。
フランス貴族や王族に愛された美しさ
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ブレゲの時計はフランス王妃マリーアントワネットやルイ16世を始めとする王族や貴族に愛され、時計の価値を大きく向上させました。
ブレゲが手掛けた時計でもっとも有名なもののひとつに、マリー・アントワネットの懐中時計があります。
クリスタルと金でできたその時計は完成までに44年の歳月を経たとされ、完成したときにはすでに王妃が処刑台の露と消えた後でした。
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多くの著名人に愛された理由として、ブレゲだけが創り出せた美麗なデザインが挙げられます。ブレゲといえばどうしてもメカニカルな技術が印象的ですが、ケースに施された"コインエッジ装飾"や文字盤の"ギヨシェ彫り"など、装飾の美しさも一級品です。
他にも"ブレゲ針"や"ブレゲ数字"など数々の意匠は、多くの愛好家を魅了しています。
マリーンの魅力
マリーンが発表されたのは1990年。
ブレゲは1815年にルイ18世から依頼を受け、フランス海軍のマリン・クロノメーター製作をはじめており、このことは当時の時計技師にとって最高の栄誉でした。海軍のために開発した航海用精密時計、マリン・クロノメーターをオマージュして製作されたのが「マリーン」コレクションです。
モデル名であるMarineは英語で「海洋の」を意味しますが、同時に「海軍」を意味する言葉でもあります。
マリーンはブレゲ発祥の伝統装備であるブレゲ針やギヨシェ文字盤など、古典的かつ上品なデザインを基調としています。さらに以下の要素が付加されています。
・当時のトレンドサイズよりも大きなケース径
・スポーツウォッチだけに採用されていたリューズガード
・防水性能を高めるコインエッジが刻まれたサンドイッチ構造ケース
多くのトレンドの先駆けとなるこれらのデザインを手がけたのが、当時気鋭のデザイナーとして売り出し中だったヨルグ・イゼック氏で、“ラグジュアリースポーツ(エレガントスポーツ)”という新しいコンセプトを生み出しました。
ラグスポの中ではお値打ち
ブレゲはラグジュアリースポーツウォッチのなかでは、お買い得感が強いモデルです。
現在オーデマピゲ ロイヤルオークや、パテックフィリップ ノーチラスといったスポーツウォッチは、もともとの高価格帯の定価設定もさることながら、近年の高騰の影響を受け、さらに「雲の上のブランド時計」となっている状況が続いています。その勢いは、ステンレススティール製の時計とは思えないほどです。
ロイヤルオークの新型15500STの実勢相場は中古であっても700万円を切ることはなかなかありません。ブレゲは雲上ブランドでありながら、マリーンII・5817のステンレスモデルは中古で250万円前後です。
実勢価格の相場ですので状態や付属品の有無によって変わってきますが、職人がひとつひとつ手をかけた上質なラグジュアリースポーツウォッチであることを鑑みれば、お値打ちと言っていいでしょう。
デザインの特徴
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マリーンのデザインの特徴としてあげられるものには、創業当初から2世紀以上変わらない先端が月の形をイメージさせる伝統的なブレゲ針があります。
そして熟練の職人によりひとつひとつ手作業で仕上げられている、ダイヤルや文字盤を飾るギヨシェ彫りもブレゲの特徴となり、高度な技術力の成せる技といえます。
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ギヨシェ彫りのモチーフはシリーズごとに異なり、マリーンではヴァーグと呼ばれる象徴的なさざ波のような美しい波模様が使われています。
デザインはシンプルで見やすく上品なラグジュアリースポーツウォッチです。
クラシカルな存在感を持ちつつも軽量でスポーティーさを兼ね備えたブレゲ「マリーン」コレクションはビジネスシーンにも相応しい時計です。
種類が豊富
マリーンは種類が豊富でゴールドモデルから、防水性能にもこだわったスポーティなクロノグラフ、アラームウォッチや複雑時計まで揃い、現行モデルだけでも9種類あります。
文字盤のカラーには波頭のようなシルバーや、深いブルー、夜の海を思わせるスレートグレーなどが使われ、文字盤中央から渦を描いたデザインなど多彩な視点で海の奥深さを表しています。ケースサイズは、33.8mm〜45mmと幅広く展開しています。また、世代によって様々な特徴があります。
既に生産終了となったモデルもありますが、人気の高い4世代のモデルをご紹介します。
■第一世代:初代マリーン
初代マリーンは1990年に発表されました。
ブレゲらしいエレガントデザインをベースとしつつ、ケースサイドにリューズガードを備えた新たなスポーティースタイルを世界に提案したモデルです。
デザインに備わったのは著名な時計デザイナー、「ヨルグ・イゼック氏」。
ローズゴールドモデルのほか、ステンレススティール×ゴールドのコンビモデルも存在します。
■第二世代:マリーンII (マリーン ラージデイトRef.5817および5827)
マリーンIIは2004年に発表されました。
ギヨシェ装飾入りのローマン文字盤、コインエッジを刻み込んだサンドイッチ構造ケースなどを受け継ぎつつ、100m防水性能となりました。ケース径は36mmから39mmへとサイズアップし、より実用的なラバーストラップとステンレススティールブレスレットが追加されました。
初代マリーンは伝統的なブレゲらしさにスポーティーを加えていましたが、マリーンIIではよりスポーティーを強調したモデルへと進化しています。
5517TIというチタン素材のモデルや、5517BRというローズゴールド×ゴールドのモデルも存在します。文字盤はブルーとシルバーがラインナップされています。
■第三世代:マリーン (Ref.5517および5527)
マリーン5517は2018年に登場しました。
前年発表の複雑時計「マリーン エクアシオン マルシャント」をベースにして、文字盤・ケースデザインが大きく変更され、ファンの間では賛否両論となりました。
ケース素材にはチタンが使われ、3針・5517のケース径は40mmにサイズアップ。
クロノグラフモデル5527は42.3mmです。ベゼルが細身となり、上下のラグがフラットなプレートタイプとなりました。
すっきりとした印象で、よりマリーンのスポーティーテイストを強調したモデルチェンジといえます。
文字盤装飾が大きく変わり、波模様のヴァーグ・ギヨシェがより波を強調させるものとなっています。
従来品よりも蓄光可能なアワーマーカーとブレゲ針により視認性が向上し、秒針の後端には国際海洋信号旗の”B”のモチーフがあしらわれています。
出典:kaiho.mlit.go.jp/04kanku/nagoya/kokusaishingouki1.html
※旗りゅう信号(国際信号旗を使用)は、26旗のアルファベット文字旗、3旗の代表旗及び回答旗の合計40旗で構成されています。(国際信号旗とモールス信号)
ホワイトゴールドとローズゴールド素材がラインナップされており、ストラップはラバー・メタル・革ベルトの三種となります。
■第四世代:ロイヤル (Ref.5847)
マリーンロイヤル5847は2009年に登場しました。ケースは45mmまでサイズアップしました。前作までは100mだった防水性能を一気に300mにまで高め、エッジの立った逆回転防止ベゼルを初めて装備、さらに水中で音がよく伝わるというアラーム機能まで加わりました。
10時位置にアラームチャイムのパワーリザーブを備え、ケース2時位置に配されているリューズを回すことにより、ゼンマイと共に巻き上げることができるというものです。
4時位置にアラーム針の設定リューズ、8時位置にアラームのオン・オフボタン、ダイアルにアラームのパワーリザーブ表示を装備しています。
ラバーストラップを標準装備しており、ホワイトゴールド、ローズゴールドモデルから選ぶことができます。ダイバーズウォッチに通じるようなタフでファッショナブルなイメージの個性派モデルが誕生しました。
マリーンにはシークレットサインがない?
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ブレゲの時計は初期の18世紀から偽物の流通に悩まされてきました。そこで考案されたのが判別するためのシークレットサインです。
このサインは1795年以降のブレゲ製品のうちブレゲ自身が製作したものに記されていたという説があります。
基本的にはドレスモデルのクラシックに入っていますが、文字板の種類によって入っていないものがあります。(シェル、エナメルなどには入っています)
マリーンにはシークレットサインが入っているものといないものが混在しています。特別な記念モデルには入っている場合があるようですが、チタンモデルとローズゴールドモデルには入っていないとされています。
スポーツモデルには必ずしも入っているものではないという説もあり、詳細についてはっきりしていないのが現状です。
最後に
数あるラグジュアリースポーツウォッチのなかでも、シックな印象で人気のブレゲマリーン。
ギヨシェ文字盤やブレゲ針、コインエッジなど、ブレゲならではのデザインが網羅されているのが人気のポイントです。
ブレゲらしいデザインの魅力と、現代のスポーツウォッチとしての魅力を両方兼ね備えた、時計通の所有欲を満たすスポーツウォッチ。いつかは手にしてみたいという憧れの時計に挙げられるのも納得ですね。
この記事を監修してくれた時計博士
Onoda Koichi
一級時計修理技能士取得
高級時計専門店GINZA RASIN 本社 ロジスティック部 商品管理課 主任
1982年生まれ 神奈川県出身 時計業界2005年より
大学卒業後、時計の販売や修理受付を経験した後、修理専門学校に入学。メンテナンスの基本知識を学ぶ。2009年に専門学校卒業後、時計専門の修理会社や国内メーカー、正規輸入代理店で腕を磨き12年以上の時計修理実務経験を経た後、2023年3月より商品管理業務に従事。
なお、国内メーカー在籍時、時計技能競技全国大会に出場した経歴を持つ。