ロレックスヨットマスターIIは、ヨットレースに特化したプロフェッショナルモデルとして誕生しました。
ケース径44mmとインパクトのあるルックスで、最大の特徴はデイトナの自社製クロノグラフムーブメントをCal.4130ベースとし、カウントダウン機能を搭載し開発した、世界初のレガッタクロノグラフムーブメントCal.4160を採用していることです。
また、一部のモデルには廃盤の噂が出ていることをご存知ですか?ロレックスの時計は廃盤後に中古価格が高まる傾向があります。
そこでこの記事ではヨットマスターIIの魅力や特徴、それぞれの系譜、廃盤の噂があるモデルについて詳しく語っていきます。
ロレックスヨットマスターIIとは
出典:https://www.rolex.com/
ヨットマスターIIは、ヨットマスターが誕生した1992年から15年後の2007年に発表されました。ヨットレース用にカウントダウン機能付きのレガッタクロノグラフ機構を搭載しています。
また、ケース径はリューズガードを含まないサイズで44mm・14mm厚となっており、
ロレックスのモデルの中では ディープシーに次ぐ大きさでインパクトがあるのも特徴です。
レガッタクロノグラフとは
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レガッタクロノグラフとは、ロレックスが独自に開発した「カウントダウン」と「ストップウォッチ」の2つの機能を持った機構です。
ロレックスの中で最も複雑と称されるムーブメントCal.4160と4161を搭載し、“リングコマンドベゼル”という新機構を時計内部と連動するようになっており、最大10分までのカウントダウンが可能となっています。
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Cal.4160は、ヨットレースにおけるプロセーラーのニーズに応えるためにロレックスが独自に開発・製造したヨットマスター II専用の機械式レガッタ・クロノグラフムーブメントです。
Cal.4161は、デイトナRef.116520やRef.116500LNに搭載されていたCal.4130をベースに3万5000時間もの開発期間を経て完成されたロレックスが誇る新型ムーブメントです。
約72時間のパワーリザーブを誇り、高い利便性でも評価されています。
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“リングコマンドベゼル”とは、ムーブメントに連動して特殊なトリガーとしての役割を備えた双方向回転式ベゼルのことです。
現行モデルではヨットマスターIIとスカイドゥエラーに搭載されており、レガッタクロノグラフであるヨットマスターIIではカウントダウン機能のプログラミング(設定)のために使用されています。
ヨットは風を受けて進むものなので、停止している状態から急加速するということはできません。
スタート前に、風を受けた状態でスタート地点に向かい、合図と共にスタートする必要があります。
レガッタクロノグラフは、そんな「レース開始まであと◯分!」の◯分に合わせて時間をセットし、カウントダウンする機能となっています。
シンクロナイゼーション機能とは
シンクロナイゼーション機能は、カウントダウンをリセットボタンを押すことでリスタートさせる機能で「同期」という意味を持ちます。カウントダウン計測を行う際は、クロノグラフ秒針が12時位置からスタートし、60秒かけて1周回転します。
この機能を使えば、進みだしたクロノグラフ秒針を、一瞬で12時位置に戻し0からカウントダウンを再開できます。この時、クロノグラフ針が30秒を超えている状態で上記操作を行うと、カウントダウン針が一つ(1分)カウントされ、30秒より前の位置であれば一つカウントがバックします。
つまり、この機能を使うことで、計測スタート後に公式シグナルに合わせたカウントダウンに修正ができるのです。
ヨットマスターII・カウントダウン機能使い方
カウントダウン機能使用パーツ
A. スタート/ストップボタン
B. リセットボタン
C. カウントダウンの秒針
D. カウントダウンの分針
E. 90度回転するリングベゼル
カウントダウンタイマーを使用するにはまず回転ベゼル(E)を反時計回りに90度回します。
次に4時位置のプッシュボタン(B)を押します。(ベゼルが正位置にない時はプッシャーにロックがかかり、作動しません。)続いてリューズを手前に回してリューズを緩めます。
この状態でリューズを今度は前方に回すと1分刻みでカウントダウン分針(D)を動かすことができます。
カウントダウンしたい時間にカウントダウン分針(D)を合わせ、回転ベゼル(E)を90度時計周りに回しベゼルを元の位置に戻すと設定完了です。そしてリューズを押し込みながら前方に回し、止まるところまでねじ込みます。
カウントダウンの計測が終了したら上のプッシュボタン(A)を押してクロノグラフ秒針をストップします。
そして4時位置のプッシュボタン(B)でリセットします。
ヨットマスターIIは廃盤の噂がある?
ヨットマスターIIに廃盤の噂が流れているのはご存知でしょうか。
それは「Ref.116680」で2013年に発表されたモデルです。
搭載されているムーブメント、Cal.4161が新しいものに切り替わるのではないかと噂されているようです。
その理由は、2022年に同じCal.4161を搭載したRef.116689が廃盤になったからというものです。
ロレックスの時計は人気モデルの場合、買取時に100万円以上の価格になることも珍しくないです。
その実勢価格(中古価格)は、発売直後と廃盤後に高まる傾向にあるので注目されています。
ヨットマスターIIの系譜と中古価格
複雑機構を搭載したヨットマスターIIは、ロレックスの中では比較的新しいモデルです。
その系譜と中古価格(実勢価格)をご紹介します。
Ref.116688:2007年〜現在
Ref.116688は、2007年にヨットレース向けのプロフェッショナルラインとして発表されたK18イエローゴールドモデルです。
カウントダウン機能が付いた「レガッタ クロノグラフ」のリングコマンドベゼルが内部のメカニズムと連動する仕様で、レースがスタートするタイミングに合わせてセットすることが可能となっています。
ケースサイズ44mm・ケース厚14mmと大きく、ゴールドモデルなので迫力があります。
ホワイト文字盤に鮮やかなブルーのベゼル、イエローゴールドの組み合わせが爽やかな印象です。ベゼルには耐傷性・耐蝕性に優れるセラミックが使用されています。
2011年からは指針・時分針と秒針がロジウムコーティングからブルーコーティングに変更され、2013年には搭載ムーブメントがCal.4160からCal.4161へマイナーチェンジされています。
2017年には針とインデックスのデザインが変更され、ベンツ針(メルセデス針)と正方形のインデックスを備えるようになります。実勢価格はその状態にもよりますが、600万円〜750万円前後となっています。パワーリザーブは72時間、100m防水。
Ref.116689:2007年〜2022年
Ref.116689は、上記Ref.116688と同時に発表されたホワイトゴールドモデルです。
ヨットマスターでは初代モデルが金無垢のみだったこともあり、話題になりました。
ベゼル部分はヨットマスターのロレジウムで人気のプラチナを使用したラグジュアリーモデルです。
Ref.116688同様に2011年からは指針・時分針と秒針がロジウムコーティングからブルーコーティングに変更され、2013年には搭載ムーブメントがCal.4160からCal.4161へマイナーチェンジされています。
2017年には、針とインデックスのデザインが変更され、ホワイトゴールド製の時分針と秒針ブルーコーティングからロジウムコーティングに変更されました。
ヨットマスターIIの中ではホワイトゴールド製のこのモデルだけベゼルがプラチナです。
白い輝きが美しく、イエローゴールドのような華やかさはないものの、高級感があります。
2022年の新作発表と共にウェブカタログから姿を消して生産終了となりました。
実勢価格はその状態にもよりますが、450万円〜650万円前後となっています。
パワーリザーブは72時間、100m防水。
Ref.116681:2011年〜現在
Ref.116681は、エバーローズゴールド×ステンレススティールのロレゾールモデルです。
ロレゾールはロレジウム同様ロレックスの造語で、ロレックス(ROLEX)+ステンレススティール(SS)+ゴールド(GOLD)のコンビネーションを指します。
高級感のある時計を作る際、ケースからブレスレットまで、すべての素材にゴールドを使うと価格も高くなるし、重量も重くなる、ということで開発されたのがこのロレゾール(コンビモデル)です。
こちらもロレックス独自の金、エバーローズゴールドは2005年頃から登場したピンクゴールドを使用。
従来の18Kピンクゴールドとは異なり、少量(2%)のプラチナを配合することで色の劣化に対する耐久性が増しており、美しい輝きを長く保つことができると人気の素材です。
エバーローズゴールドのエレガントさ、ブルーセラミックベゼルの爽やかさが印象的な、求める方の多いモデルです。
2013年には搭載ムーブメントがCal.4160からCal.4161へマイナーチェンジされ、また2017年には、指針・時針デザインがベンツ針に変更されました。
実勢価格はその状態にもよりますが、300万円〜450万円前後となっています。
パワーリザーブは72時間、100m防水。
Ref.116680:2011年〜現在
Ref.116680は、ヨットマスターII待望のオールステンレスモデルとして発表されました。
ケースやブレスレットには「904Lスティール」を採用しています。「904Lスティール」とは、特に耐蝕性に優れており、ハイテク産業や宇宙工学化学工業などで限定的に使用されている、数あるステンレススチールバリエーションの中でも特別なものとして知られています。
ゴールドモデルやコンビモデルと比較しても、より実用性の高いプロフェッショナルモデルとなっています。
ムーブメントには、カウントダウン機能を改良しメンテナンス性を高めたCal.4161を採用。
実勢価格はその状態にもよりますが、280万円〜330万円前後となっています。
パワーリザーブは72時間、100m防水。
最後に
ヨットマスターIIはロレックスの中では比較的新しいモデルですが、ヨットマスターからのヨット界とのつながりは65年以上と長いです。
また人気モデルデイトナ同様に複雑機構に振り切った時計ではありますが、廃盤の噂があるにも関わらずモデルによってはまだそこまで極端に価格が高騰していません。
人とかぶらない特別なスポーツロレックスが欲しいという人にもおすすめのモデルです。
この記事を監修してくれた時計博士
Onoda Koichi
一級時計修理技能士取得
高級時計専門店GINZA RASIN 本社 ロジスティック部 商品管理課 主任
1982年生まれ 神奈川県出身 時計業界2005年より
大学卒業後、時計の販売や修理受付を経験した後、修理専門学校に入学。メンテナンスの基本知識を学ぶ。2009年に専門学校卒業後、時計専門の修理会社や国内メーカー、正規輸入代理店で腕を磨き12年以上の時計修理実務経験を経た後、2023年3月より商品管理業務に従事。
なお、国内メーカー在籍時、時計技能競技全国大会に出場した経歴を持つ。