ロレックスミルガウスの魅力や特徴について徹底解説!

監修:Onoda Koichi
2024/02/02

ミルガウスは1956年に発売されたロレックスの耐磁時計です。発電所など磁場にさらされた状態で働く研究者向けに開発された特別なモデルです。
1990年頃に一度ラインナップから外れており、2007年に復活を遂げている珍しいモデルでもあります。
今回はそんなミルガウスの魅力や特徴、モデルの系譜についてもご紹介していきます。

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ロレックスミルガウスとは

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ロレックスミルガウスは、1956年に誕生した時計です。
正式名称は「オイスター・パーペチュアル・ミルガウス」といって、放射線技師や研究者など磁気の影響を受けやすい環境で働く人達のために開発された特別なモデルでした。
名前の由来はフランス語のmill(数字の1000)gauss(磁束密度の単位)で、文字通り1000ガウスもの磁束密度に耐えられる耐磁性を実現しています。

耐磁時計として開発

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出典:https://www.bobswatches.com/

ミルガウスはその名が表すとおり、1000ガウスの耐磁性能を持つ時計として1956年に誕生しました。
当時ロレックスは、海・空など過酷な環境下で使用できるサブマリーナーやGMTマスターを製造しており、高い磁気下においても通常使用に耐えられる実用時計の開発に着手していました。
その開発は、同時期に設立された欧州原子核研究機構(CERN)との協同のもと、おこなわれました。
一般的な腕時計は耐磁性が約50〜100ガウスと言われていますので、比べてみると強力な耐磁性能があることがわかります。

 

生産終了後に復活している

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ミルガウスはニッチなユーザーに向けて作られた特殊な時計でした。
時代に先駆けて開発されたものの、その先進性が広がらず、わずか2世代で1980年代の後半に生産終了してしまいました。
現在では「精密時計は磁気に弱い」ことは時計ファンに知られていることですが、この時代にはそこまでの理解がされていなかったのかもしれません。
それからしばらくの間はヴィンテージのレアウォッチとして認識されていました。
しかし、携帯電話やPCなど磁気製品が身近なものとなってミルガウスは、2007年に“Ref.116400”として復活を遂げることになります。

 

パーツはミルガウス専用

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2007年に復活後のミルガウスの多くのパーツは専用に作られています。
ムーブメントには2005年からは開発された、高い耐磁性能をもつパラクロムヒゲゼンマイを採用したミルガウスのための特別な耐磁ムーブメント“Cal.3131”を搭載しています。このパラクロムヒゲゼンマイには耐磁性能に加え、温度特性、耐衝撃性をも備えたパラクロム合金という素材が使われています。

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出典:https://www.rolex.com

このムーブメントは後にパイロットウォッチが出自で同じく耐磁性が求められる“エアキング ”に引き継がれることになります。
2007年から本体ケースには、こちらも専用に作られたインナーケースで磁気を受け流す“耐磁ケース”を採用し、徹底的に磁気を遮断しています。

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出典:https://www.rolex.com

このインナーケースには、”B”というアルファベットが刻印されており、磁束密度を示しています。
また、その上から被せられたオイスターケースバックには、「ROLEX OYSTER MILGAUSS」のロゴがプリントされています。
ケース径は37mmから、通常のオイスターケース同様40mmにサイズアップしましたが、若干の厚みを持つことが特徴です。

 

変わり種のラインナップ

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ミルガウスはロレックスの中では珍しいタイプの時計です。
2007年に復活するより前の1956年〜1987年まで、約30年製造されていたにもかかわらず世代的には3つしかありません。
そんなちょっと変わり種のミルガウスを系譜に沿ってモデル別にご紹介します。

 

Ref.6541:1956年~1960年代前半

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出典:https://montro.com/

初代ミルガウス Ref.6541回転ベゼルを搭載していました。
秒針にはイナズマ針を使用し、ブラック文字盤やドットインデックスはサブマリーナーを連想させます。後に回転ベゼルはポリッシュ仕上げのスムースベゼルへと変更されました。
ムーブメントはCal.1065M、Cal.1066M、Cal.1080と3度の変遷を遂げていますが、全てミルガウス仕様のものを搭載しています。

1987年の廃盤以前のミルガウスは個体数が少なく、特にファーストモデルは数年しか製造されていなかったこともあり、欧米を中心にコレクターズアイテムとして大人気です。なかなかお目にかかることはありませんが、その状態によっては実勢価格5000万円前後ほどの高値が付けられています。ケース径37mm。50m防水。パワーリザーブ約48時間。

 

Ref.1019:1959年~1990年前後

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第二世代のミルガウスRef.1019は、回転ベゼルイナズマ秒針がなくなり、当時のエアキングエクスプローラーIを想起させるようなシンプルデザインに変化しました。
文字盤のカラーはブラックとシルバーです。
30年ほど製造された型番ですので、文字盤仕様などにいくつかの変更があり、初期個体にのみ見られたヘアライン仕上げ文字盤は、その稀少性からコレクター垂涎の逸品となっています。
こちらのムーブメントCal.1580ミルガウス仕様になっています。

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ムーブメント自体を耐磁シールドで覆うことで磁気帯びを防ぐだけでなく、ヒゲゼンマイやテンプに耐磁素材を使用することでさらにこだわりの耐磁性能を有することとなりました。
1970年代以降にはハック機能も搭載されます。
初代同様に希少性が高く、状態にもよりますが実勢価格400万円〜700万円前後で取引されています。ケース径37mm。50m防水。パワーリザーブ約48時間。

 

Ref.116400:2007年~2015年頃

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1988年に一度生産終了となったミルガウスでしたが、2007年にRef.116400として復活を遂げます。当初は、ブラック・ホワイト文字盤が販売されていました。
ホワイト文字盤のカラーが鮮やかなオレンジとホワイトの組み合わせであることから、「トロピカルマンゴー」などとよばれ親しまれています。

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初代モデルのイナズマ秒針も復活して、二代目のシンプルでスタイリッシュなスムースベゼルが組み合わさったかのような逸品と話題になりました。

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ケース径は37mmから40mmへとサイズアップしました。ミルガウスには特有のケースの厚みがあるため男性的な印象が強まりましたが、ポリッシュ仕上げにより上品な高級感も備えています。
2015年にはブラック文字盤が、次いで2016年にホワイト文字盤が生産終了となりました。状態にもよりますが実勢価格130万円〜160万円前後で取引されています。
100m防水。パワーリザーブ約48時間。

 

Ref.116400GV:2007年~2023年

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Ref.116400GVは2007年のミルガウス復活の際に発表された、ミルガウス誕生50周年アニバーサリーモデルです。
秒針にはRef.116400同様にイナズマ針が使われ、ロレックスのコーポレートカラーであるグリーンカラーのサファイアガラスが特徴となっています。
ちなみにモデル名のGVはフランス語で「グリーンガラス」を意味します。
文字盤カラーはブラックと、“Zブルー”と呼ばれるブルーの2種類があります。
ムーブメントには磁気に強いブルーパラクロムヒゲゼンマイを採用した耐磁ムーブメント“Cal.3131”を搭載し、本体ケースには、インナーケースで磁気を受け流す“耐磁ケース”を採用しています。

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ロレックス製品の風防6時位置には、偽造防止のため王冠の透かしマークが入っていることが通例ですが、ミルガウスグリーンサファイアガラスには見られません。ガラスの色味が損なわれるから、など色々諸説ありますが、はっきりとした理由はわかりません。
インデックスの夜光の塗り方も他のモデルと異なっていて、3時・6時・9時のインデックスにはオレンジ夜光が採用されており、そこだけ色味を変えています。この色使いが素晴らしく、イタリアンスタイルでおなじみのアズーロ・エ・マローネ(青系と茶系の組み合わせのこと)を時計デザインとして採用したロレックスらしいクラス感が光るモデルです。

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Zブルーの文字盤は2014年に加わったもので、Zは文字盤の塗料に含まれる「ジルコニウム」の頭文字が由来となっています。
ジルコニウムが含有された文字盤に下処理・メッキ加工を施すことで、ジルコニウムが持つ青色を発色させる、という仕様が用いられており、ジュエリーのように輝く美しい色味です。
特にZブルー文字盤が人気で、状態にもよりますが実勢価格は170万円〜190万円前後、ブラック文字盤は130万円〜160万円前後で取引されています。
ケース径40mm。100m防水。パワーリザーブ約48時間。

 

最後に

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ロレックスミルガウスは、系譜やデザインなど他のモデルとは一味違ったモデルとして生産終了後も根強い人気です。
「新ムーブメントを搭載し、復活して欲しい」というファンも多いようですが、昨年終了となったこと、「エアキング 」がその耐磁性を引き継いだことから、すぐの復活はないかもしれません。
世代によって様々な個性があることも魅力ですので、ヴィンテージから最終モデルまで幅広く検討してみてはいかがでしょうか。