GMTマスターは1955年にアメリカン航空の国際線パイロットのために作られた、ロレックス唯一のパイロットウォッチです。
2色使いのベゼルが他のロレックスには無いデザインで、”ペプシ”など愛称を付けられコレクション性が高いので常に注目されています。GMTマスターのベゼルが他のスポーツロレックスと違うのは24時間表記の両方向回転ベゼルが使用されていることです。今回はそんなGMTマスターI・IIの違いや特徴・魅力、使用方法などをご紹介していきます。
GMTマスターの特徴と魅力
ロレックスで人気のスポーツウォッチ、GMTマスターにはどんな特徴や魅力があるのかご紹介します。
ツートンカラーのベゼル
※画像は右周りに、ペプシ・バットマン・フクシア・ルートビアベゼルです。
GMTマスターはベゼルカラーが豊富です。赤青ベゼル・青黒ベゼル・赤黒ベゼルといったカラーリングが存在します。特に人気で認知度が高いのは赤青ベゼルの愛称“ペプシ”です。他にも、コーク・バットマン・フクシア・ルートビアなどたくさんの愛称を付けられて愛されています。
両方向回転ベゼル
GMTマスターのベゼルは24時間計として機能し、定位置にある時は第2時間帯を示します。左右両方向に回るベゼルはサンダーバードやヨットマスターなどに採用されており、GMTモデルや航空計算尺の時計、マリン系の一部モデルなどで見られる仕様です。Ref.116710からは素材がセラミックベゼルとなり艶があって高級感がある仕上がりとなっています。
高品質なムーブメント
出典:https://www.rolex.com/
GMTマスターの現行モデルは、2018年のバーゼルワールドで登場したGMTマスターII専用のムーブメントCal.3285を搭載しています。約70時間のパワーリザーブでゼンマイを巻き上げた後、約三日間も動き続ける頼もしい存在です。精度日差-2〜+ 2 秒となっており、ロレックス独自の新規格「高精度クロノメーター」の導入により、クロノメーターよりも厳しい検査基準をクリアした時計になっています。
高い防水性能
現行モデルは100m防水という非常に高い「防水性」を誇ります。
日常的な防水効果はもちろん天候に左右されやすい屋外での仕事をしている方でも問題なく使用できますね。
GMTマスターI・IIの使い方
GMTマスターI・IIの使用方法をご紹介します。
GMTマスターの装備
GMTマスターIIは、1982年頃から短針を単独で動かせるようになって誕生しました。
カレンダーのみの早送りはできなくなりましたが、24時間回転ベゼルと合わせると3か国の時間を表示可能になりました。GMTマスターの時間を設定するには以下の装備を使用します。
①長針(分針として使用する)
②短針(時針として使用する)
③秒針(秒針として使用する)
④GMT針(ベゼルと合わせて第2時間帯を読むのに使用する)
⑤ベゼル(GMTマスターIIでは、回して表示された数字で第3時間帯を読む)
⑥リューズ(時刻を設定するのに使用する)
GMT針は長短針と連動しており 短針の半分の速度(角度)で回転します。
ベゼルは2〜22までの偶数と▼マークが刻印されており 両方向に回転できるようになっています。
GMTマスターIの使い方
GMTマスターIにおいて、第2時間帯を表すのに使用するのは基本的に時針と24時間表記の入った回転ベゼルです。この回転ベゼルは両方向どちらにも回転します。
GMTマスターIの場合、GMT針は時針と連動していて24時間で文字盤を1周します。
【日本を午後6時としたときにジュネーブ(時差7時間)の時間を表示する場合】の使用方法です。
①ベゼルを正位置に戻してネジ込みリューズを開放する
基本的に24時間表記ベゼルは▼マークが12時位置にあるのが正ポジションです。
この位置にセットしていなくても第2時間帯を表示するのには支障はありませんが慣れるまでには、正ポジションから動かした方がわかりやすいでしょう。
②ジュネーブとの時差分、針を動かす
日本とジュネーブの時差、7時間分針のみを遅らせます。
針は午前11時を指します。
③続いて時差の分だけベゼルを回転させます
ジュネーブは日本より7時間遅れているのでベゼルを7時間左に回します。
ベゼルは24時間表記になっているので回転させる時の「7時間」はベゼルの目盛での7時間です。長針、短針からはジュネーブの時刻(午前11時)が、 GMT針と回転ベゼルを使用して日本の時刻午後6時(18時)を読むことができます。
GMTマスターIIの使い方
GMTマスターIで第2時間帯を表すのに使用するのは、両方向に回転する「24時間表記ベゼル」ですが、GMTマスターIIの場合は第2時間帯を表すだけなら基本的にベゼルを操作する必要はありません。
GMTマスターIIでは時針だけを1時間単位で動かせます。この機構のためにデイトの早送りはできなくなりました。
デイト表示は時針の動きと連動しており、時針が表示している地域の日付を表示する事になります。
こちらも【日本を午後6時としたときにジュネーブ(時差7時間)と香港(時差1時間)の時間を表示する】場合の使用方法です。
①ベゼルを正位置に戻してネジ込みリューズを開放する
基本的に24時間表記ベゼルは▼マークが12時位置にあるのが正ポジションです。
まずは24時間表記ベゼルを正ポジションにセットしてから操作します。
(IもIIも変わらずおこないます。)
②ジュネーブとの時差分、短針(時針)のみを動かす
日本とジュネーブの時差である7時間分、リューズを1段引いて短針(時針)のみを遅らせます。針は午前11時を指します。
③香港との時差分、24時間ベゼルを動かし第3時間帯を表示させる
ここからがIIのみの機能です。もうひとつ知りたい地域の時差分24時間ベゼルを回転させます。
この場合、香港なので1時間分右に回すと「GMT針と24時間ベゼル」から、香港の時間が午後5時(17時)であることが読みとれます。
GMTマスターIとIIの違い
GMTマスターIは1955年にアメリカン航空の国際線パイロットのために作られました。
約30年後の1982年には初代のGMTマスターのムーブメントを改良した、GMTマスターIIが発表されてGMTマスターIは製造終了となっています。
GMTマスターIとIIの違いについて説明します。
GMTマスターIIは短針だけ動かせる
「I」は長針、短針と連動して動くという特徴を持ち合わせており、単独で動かすことはできません。そのため、ベゼルとGMT針の位置から2カ国の時間を判断します。
「II」は短針のみを単独で動かすことが可能です。細かな調整が可能となるため、3カ国の時間が判別できるようになっています。
日付のクイックチェンジの有無
※画像は左がGMTマスターI 16700、右がGMTマスターII 16710。外観はほとんど変わりません。
GMTマスター「I」は日付クイックチェンジがついていて、「II」は日付クイックチェンジがないという違いもあり、日付調整は「I」の方が楽で良いという方も多いです。
耐蝕性・耐久性が上がっている
GMTマスターIのベゼルには、プラスチックかアルミニウムが使用されており、経年変化により割れたり、傷がついたり、色が変わったりすることもあります。(それがヴィンテージとしての味わいにもつながることも多いです)
GMTマスターIIでは発表当初、ベゼルにアルミニウムを使用していましたが、2006年頃から耐蝕性・耐久性に優れたセラミックに変更して綺麗な状態を長く保てるようになりました。
5桁型番ならベゼル交換できる
5桁型番GMTマスターの場合、ベゼルディスクの交換が可能です。
例えば人気の赤青の“ペプシ”や赤黒の“コーク”ベゼルなどを、服装に合わせやすい“黒”ベゼルに交換することができます。
時計愛好家の人も、その日の気分で金無垢の初期ベゼルなどに交換して表情の違いを楽しんでいます。
交換するベゼルの価格ですが、4桁モデル用できれいにカラーチェンジしたもの、コンディションの良いものは数十万円と価格が高騰してきています。対して、5桁モデル用はまだ数万円で買えるものも少なくないので選ぶ楽しみがあります。
依頼する修理メーカーにもよりますが、2万円弱でメーカー交換ができるのでお得ですね。
回せるベゼルの間隔が違う
GMTマスターIは、ベゼルを回転させる時に【12分単位】で細かく動かすことができます。
対してGMTマスターIIは、【1時間単位】となっています。
実は、1時間単位になったのはGMTマスターIIの中でも「116710LN」以降のモデルになります。分単位で細かく時間を確認したいという方には、116710LNよりも前のモデルの方が便利かもしれませんね。
最後に
GMTマスターI・IIの違い・特徴や魅力・使用方法についてご紹介しました。
GMTマスターは、第2時間帯の確認が容易に出来るという利便性の高さが魅力のパイロットウォッチです。
すぐにロレックスとわかる洗練されたカラーリングやデザイン、防水性も高く実用性が高い時計ということもあって、おしゃれな方々が好んでコレクションする時計として定番となっています。
芸能人でもつけている方が多く、日本の俳優さんですと竹野内豊さんがRef. 1675、京本政樹さんがRef. 6542と、それぞれヴィンテージモデルを持っています。映画でも木村拓哉さんがRef. 16753をつけており、人気の高さがうかがえますね。GMTマスターの歴史についてもっと知りたいという方はこちらの記事もご参考ください。
この記事を監修してくれた時計博士
Endo Youkoh
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC 上級ウォッチコーディネーター取得
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 銀座本店 販売スタッフ
1984年生まれ 神奈川県出身 時計業界2017年より
デザイン系の短大を卒業後、23歳で大手セレクトショップに入社。 主にレディースの服飾雑貨の責任者として、店頭接客・MD・VMD業務に携わる。入社10年目を機に更なるステップアップを目指し、高級時計店への転職を決意。2017年にGINZA RASIN入社。
人と話すのが好きで、スーパーポジティブな私は、現在お気に入りのIWC メカニカルフリーガークロノと共に店舗にて販売業務に従事。アパレル業界での経験を生かし、多角的な視点で記事監修を行っている。