ロレックスの代表格であるスポーツモデル「サブマリーナー」。プロフェッショナルユースとして開発され、300m防水や逆回転防止ベゼルなどの機能を搭載した、ダイバーズウォッチの代名詞です。1965年以降、平行して製造されてきた、カレンダー機能搭載の「デイト」と非搭載の「ノンデイト」は、どちらも甲乙つけがたい人気モデルです。
どちらを選んだら良いのかと迷われる方も多いと思います。そこで今回はサブマリーナーの「デイト」についてご紹介していきます。
サブマリーナー デイトとノンデイト
カレンダー機能付きのサブマリーナーデイトが登場したのは、1965年に発表されたモデル“Ref.1680”からです。1956年に発表されたロレックスの三大機構の1つ「デイトジャスト」をサブマリーナに搭載させるには9年の開発年月が必要だったと考えられます。
以前はデイトと、ノンデイトでムーブメントのグレードやクロノメーター認定の有無といったスペック的な差も設定されていましたが、現行に至っては殆ど差はありません。サブマリーナーデイトの特徴について、系譜と共にご紹介します。
サブマリーナーデイトの系譜
「デイト」は「ノンデイト」が開発された1953年頃から16年程たった、1960年代頃に発表されています。日めくり部分が虫眼鏡状になっているサイクロップレンズは、この初代モデルから使用されていました。
Ref.1680 (製造期間 1960年代後半~1980年代)
Ref.1680は、カレンダーを搭載した初のデイト付きサブマリーナーです。ムーブメントはCal.1570を搭載しています。ダイヤルにはカレンダーの視認性をアップさせるために、約2.5倍に拡大するサイクロップレンズを採用しています。生産初期にはレア・モデルである「赤サブ」と呼ばれる「SUBMARINER」の表記が赤い個体が存在します。
Ref.16800 (製造期間 1980年代)
プラスチック製だった風防が、サファイアクリスタル製へ変更されて300m防水を実現したモデル。安全性の面から逆回転防止ベゼルが採用されるようになります。
本モデルに搭載されているCal.3035は毎時28,800振動のハイビート仕様となっており、前モデルのCal.1570(毎時19,800振動)と比べ精度が高くなっています。この高精度化に加えて日付の早送り機能であるクイックチェンジを搭載するなど、実用性と操作性をともに向上させたモデルとなります。
1985年頃〜ダイヤルの夜光インデックスにメタル枠が備えられるようになり、1985年頃より前のものを前期モデルの”フチなし”、後のものを後期モデルの“フチあり”と呼ぶようになります。(※写真はフチあり)
Ref.16610 (製造期間 1980年代後半~2010年)
Ref.16610は、約20年間という長い生産期間の中で、何回かマイナーチェンジが行われたロングセラーモデルです。
テンプを1つのブリッジで支えるCal.3035ムーブメントから、ツインブリッジ化されたCal.3135に変更され、安定性・メンテナンス性の向上が図られています。
長い生産期間の間に、ケースやブレスレットの形状や夜光塗料の変更など、徐々に実用性や機能性を向上させたモデルといえます。
さらにダイヤル6時位置の王冠の透かし(2003年)やインナーリングへのルーレット刻印(2007年)などの偽造防止策も施されました。
Ref.16610LV (製造期間 2003年~2010年)
Ref.16610LVは、サブマリーナー誕生50周年を記念して発表されました。ムーブメントはCal.3135を搭載しています。
「グリーンサブ」と呼ばれており、Ref.16610をベースにグリーンベゼルを搭載した他、針やインデックスが大きくなるなど細かな変更が加えられています。
上記の写真のように、通称「ライムベゼル」と呼ばれる淡いグリーン色のベゼルや、ダイヤル6時位置の「SWISS MADE」の間隔が通常よりも広く、文字が少し大きい「ビッグスイス(ワイドスイス)」と呼ばれる個体が初期生産分に存在し、その希少性から高い人気を誇っています。
Ref.116610LN (製造期間 2010年~2020年)
Ref.116610LNは、サブマリーナー史上初のセラミック製ベゼルを採用しています。
大きなモデルチェンジもあり、ラグの大型化やブレスレットの改良は、ダイバーズウォッチとしての信頼性を更に高いものにしました。ムーブメントはCal.3135を搭載しています。
さらに、独自開発されたブルーパラクロムヒゲゼンマイの採用で耐磁性・耐衝撃性が向上しています。
前モデルまでは中空だった中央のリンクパーツが、ソリッドパーツに変更されたブレスレットのおかげで堅牢性も高められています。
改良が加えられ、実用性や堅牢性が高められた新型バックル、「グライドロッククラスプ」を採用し、工具無しでもブレスの長さ調節が容易にできるようになりました。
ルミノバ夜光塗料の約2倍(8時間)という長さの発光時間がある、クロマライトディスプレイも採用しています。
Ref.116610LV (製造期間 2010年~2020年)
2代目グリーンサブのRef.116610LVは、ロレックスのコーポレートカラーであるグリーンを大々的にあしらっており、ロレックス史において非常に稀有なモデルです。ラグの大型化やブレスレットの変更などRef.16610LN同様に、大胆なモデルチェンジがおこなわれました。
独自開発されたブルーパラクロムヒゲゼンマイを採用しており、耐磁性・耐衝撃性が向上しました。ムーブメントはCal.3135を搭載しています。
プラチナ特殊コーティングが施された60分の目盛りがベゼルに刻まれ、潜水時間と減圧停止を正確に測定することを可能にしています。
上記のRef.116610LNと同様にブレスレット中央のリンクパーツはソリッドパーツに、グライドロッククラスプも採用しており、クロマライトディスプレイも搭載しています。
Ref.126610LN (製造期間 2020年~現在)
Ref.126610LNは、新世代ムーブメントCal.3235を搭載したモデルです。Cal.3235とは、ロレックスが開発・製造し、14 件の特許を取得した精度、約70時間のロングパワーリザーブ、耐衝撃性と耐磁性など高い性能を誇るムーブメントです。
「日付変更禁止時間」が無いカレンダーの早送り機構などもついており、利便性もアップしています。ケースは41mm径に大型化されており、それに合わせてブレスレットもワイド化しています。
ケースサイズは41mmになりましたが全体的にシャープな印象に。リューズガードは丸みを帯びた形状になっています。126610LN以降のモデルは、ケースサイズの変更に伴いコマの幅も1mm広くなりましたが、ラグ幅を1mm小さくする、リューズガードの形状を変更するなどで、全体的なシルエットが整えられています。
Ref.126610LV (製造期間 2020年代~現在)
ムーブメントはCal.3235を搭載。Ref.126610LVは、初代Ref.16610LVを想起させるグリーンベゼル×ブラックダイヤルを復活させた3代目グリーンサブです。上記のRef.126610LN同様に、ラッカー仕上げのダイヤルには、王冠マークが追加されたSWISS表記が印字されています。
上記のRef.126610LNと同様、パワーリザーブ70時間のムーブメントCal.3235を搭載しており、ダイヤルには王冠マークが追加されたSWISS表記があります。
Ref.126613LN (製造期間 2020年代~現在)
Ref.126613LNは、イエローゴールドとステンレススティールを組み合わせた「ロレゾール」仕様。スポーティーかつ華やかなモデルです。前モデルからムーブメントがCal.3135からCal.3235へ変更されました。
Ref.126613LB (製造期間 2020年代~現在)
セラミック製のベゼルとブルーのダイヤルが印象的な通称「青サブ」がモデルチェンジしました。前モデル(Ref.116610LB) と比べて変更点は少なく、ダイアル6時位置の表記の「SWISS」と「MADE」の間に新しくクラウンマークが入る程度となっています。
Ref.126618LB (製造期間 2020年代~現在)
重量感のあるイエローゴールドモデルは、セラミック製のベゼルとサンレイ仕上げの「ロイヤルブルー」ダイヤルとの相性も良いです。前モデルからムーブメントがCal.3135からCal.3235へ変更されました。
Ref.126618LN (製造期間 2020年代~現在)
Ref.126618LNはイエローゴールドが、セラミック製のベゼルと相性が良く力強いイメージのモデルです。前モデルからムーブメントがCal.3135からCal.3235へ変更されました。
Ref.126619LB (製造期間 2020年代~現在)
Ref.126619LBは、重厚感のあるホワイトゴールド素材に、セラクロム製のブルーベゼル、ブラックダイヤルの組み合わせで高級感とシャープさが感じられるモデルです。前モデルからムーブメントがCal.3135からCal.3235へ変更されました。
サブマリーナーデイトの魅力とは?
サブマリーナーはカレンダーが搭載されたデイト(Ref.1680)が発表された1965年以降、「デイト」「ノンデイト」の両モデルが並行して製造されてきましたが、どちらかというと「デイト」がサブマリーナーの主力として扱われてきました。そんなサブマリーナーデイトの魅力を以下にまとめました。
■素材やカラーが豊富
■日付表示が一目でわかる
■流通量が多い・人気が高い
サブマリーナーデイトの方は後発ですが、最初から“31系”と言われる高性能なムーブメントを使用しています。「ノンデイト」はデイトから11年程遅れ、Ref.14060Mから31系のムーブメントを搭載するようになります。
ロレックスでは、サブマリーナー開発途中から先に「デイト」を作り、そこから“デイト機能”を抜くという手法をとっているとされています。
「デイト」は、一目で日付がわかる利便性があり、新しいモデルを求める方におすすめのモデルです。
最後に
ロレックスのサブマリーナーの「デイト」についてご紹介しました。価格としては、「デイト」の方が10数万円高い傾向にありますが、「ロレックス特有のサイクロップレンズが良い」という意見や、「リセールバリューに期待したい」という声もあり人気が高いです。好きなカラーや素材・世代などに着目して、お気に入りのサブマリーナーを探してみてください。
この記事を監修してくれた時計博士
Endo Youkoh
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC 上級ウォッチコーディネーター取得
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 銀座本店 販売スタッフ
1984年生まれ 神奈川県出身 時計業界2017年より
デザイン系の短大を卒業後、23歳で大手セレクトショップに入社。 主にレディースの服飾雑貨の責任者として、店頭接客・MD・VMD業務に携わる。入社10年目を機に更なるステップアップを目指し、高級時計店への転職を決意。2017年にGINZA RASIN入社。
人と話すのが好きで、スーパーポジティブな私は、現在お気に入りのIWC メカニカルフリーガークロノと共に店舗にて販売業務に従事。アパレル業界での経験を生かし、多角的な視点で記事監修を行っている。